More Art, Less Noise.d&bでのHistory {Re}Happening
ノースカロライナ州アッシュビル近郊、当時のブラックマウンテンカレッジ(BMC)エデン湖キャンパスであった建物とそれを取り囲む自然環境を利用した2017年度{Re}HAPPENINGのステージングは、アメリカのこの地域独自の文化を探求するチャンスを与えてくれるものです。1933年から1957までとカレッジとしてはほんの短い期間だけ存在したとはいえ、大変影響力のある文化拠点となりました。
世の中には、{Re}HAPPENINGを聴覚的にも、視覚的にも単なるノイズだと受け止める人はいるようです。知的な挑戦をその意図とするこのイベント、訪問者は思考し、没頭しなければなりません。同窓生であるジョン・ケージの音楽はその典型例です。使い捨てのポップで育った人にはほとんど理解できない音楽であるとはいえ、ケージは多くの人々に尊敬される、ジャスティン・ビーバーよりも重要なアーティストとして歴史に名を残すことになるアーティストです。この毎年恒例のイベントを企画・制作するブラックマウンテンカレッジミュージアム+アーツセンターのエグゼクティブディレクター、ジェフ・アーナル氏は、「BMCは芸術分野の境界線を取り除いた場所です」と述べています。
境界線を取り除くことは現代の風潮にみられるものですが、その大部分は破壊的な活動です。しかし、このイベント、そしてBMCの起源は、芸術形態の相互への受入を讃える大変ポジティブなものといえます。{Re}HAPPENINGでは、ダンス、音楽、芝居、パフォーマンスアート、そしてオーディエンスが皆肩を並べて相互に働きかけるイベントです。
この記事をお読みの方、そしてd&b audiotechnikをよくご存知の方なら、こんなイベントをd&bが見逃すことはできないことをご理解いただけるでしょう。戦略アドバイザーであり元d&b米国支社長でもあった、コリン・ビバリッジはこんな風に述べています。「私たちは、地元にあるこの大学の歴史的な意義を認識し、その創立精神を存続させることの重要性を認識しています。私たちは数年前に小規模に始まったこのイベントにデモルームにあった照明器具を貸し出したんです。最初は、ただカジュアルにサポートしてたんです。月日が流れるにつれて、すごく積極的に参加するようになって、d&bの機器もたくさん使われるようになりました。今年から「クリエイターレベル」のスポーンサーとして参加することになりました。2017年にはd&bのライアン・ハーギスがライブ演奏のいくつかのサウンドの監修を務めました。サード・コースト・パーカッションも彼が手がけました。」
「ジョン・ケージのとの繋がりがこのイベントへのインスピレーションでした。」と語るのはアーナル氏。「彼は1952年にBMCの食堂で『Theater Piece No.1』を演奏したんですよ。当時は全く異色のものでした。今回はサード・コースト・パーカッションが彼の『Construction』を演奏しました。こんな風に私達はこのイベントのルーツを考え直し、 大学の歴史を振り返り、一体何が起こったのか、という問いを投げかけることができます。これは独立イベントではなく、歴史に繋がっている。でもその歴史ではないんです。」
ハーギスも同感のようです。「これはスマートな実験ではなくて、私がいつもやっているようなこととは全然違うんです。湖畔のセッティング、パフォーマンスの性質がとにかくすごい。それにすごくエキサイティング。サード・コースト・パーカッションは左右PAとモニターのセッティングで普通のパフォーマンスみたいな感じだったんですが、それでも圧倒されました。でもPA機器の使用に関して言えばこれは例外で、このイベントではすごく珍しいインスタレーションが沢山採用されました。一つは心臓音。マイクを心臓にぴったり当てて、50Hzあたりのすごい低域で、一連のギターペダルでリバーブかけた息がたっぷり聞こえる不思議なヴォーカルのレイヤーが重なって。すごかったですよ。絶対もう一度ここで仕事をしたい。」
アーナル氏が続けます。「d&bが参加してくれるのは本当にラッキーなことです。過去にも一緒に仕事をしましたが、今年は公式パートナーとしてサポートしてくれました。芸術イベントへの技術の導入って難しいものですが、いつも改善の余地がないかを摸索しながら頑張っています。どうやったら一番いいサウンドが出せるだろう?画像が投影されるときは、どうやったら一番きれいに見せられるだろう、って。芸術家達と仕事をすると、技術者の人たちはいつもこれまで思いつかなかったようなことにチャレンジできるようになって、両サイドとも大きな恩恵を受けることができる。これは素晴らしいことですね。」
「一日だけのイベントなんですが、国中からいろんな人たちが集まるんです。今年はニューヨークやカリフォルニアのアーティストが来ました。過去にはヨーロッパやその他の地域の人たちが来て。つまり、このイベントはすごく求められているものなんです。」ブラックマウンテンカレッジミュージアム+アーツセンターのエグゼクティブディレクター、ジェフ・アーナル氏。