ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏を香港に見事に届けるd&b Soundscape。

© London Philharmonic Orchestra

香港大會堂のコンサートホールでは2022年8月、会場の60周年と香港特別行政区の25周年を記念して特別企画されたロンドン・フィルハーモニー管弦楽団による2つの公演が大スクリーン上で披露されました。一連のd&bラウドスピーカーとDS100シグナル エンジンから構成されるd&b Soundscapeシステムを空間全体に適用。それぞれのミュージシャンが完璧にマッピング、360°の環境に配置され、観衆はまるでオーケストラの生演奏をその場で聴いているかのように思いになりました。舞台後方にある大きなLEDスクリーンでは演奏の様子が上映されました。

高品質のサウンドと魔法のような雰囲気を観客に届ける“体験型コンサート”と称されたこのイベントは、香港アートフェスティバルや香港国際映画祭など、香港で最も権威のあるイベントが開催されてきた名高いコンサートホールで行われ、そこに集った人々のために、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(LPO)の演奏がリアルに再現されました。

真にハイブリッドなイベント

コロナ関連の制限により、LPOは香港を訪れることができなかったため、コンサートは“ハイブリッド・イベント”として催されました。このハイブリッド・イベントのもとでは2つの世界が融合し、視覚と聴覚の体験がロンドンから香港へと移され、オーディエンスは完全にそこに没入することができました。大會堂内で3Dオーディオ環境を再現するツールとして活躍したのは、d&b Soundscapeです。こうしたイベントは、世界中の都市でますます人気を博しています。

音響環境の再現

チームはd&b En-SpaceとEn-Scene Soundscapeソフトウェア モジュールの両方を用いて、オーディオ体験を実現しました。En-Spaceを駆使して大會堂内の音響環境を構築し、LPOの演奏が録音されたロンドンの会場を再現して、パワフルでリアルな音響体験を創出しました。チームはLPOのそれぞれの楽器をd&b En-Scene ——DS100の基本的なマトリックス機能を拡張するオブジェクト・ベースのソフトウェア・モジュール——にロードして、本来のポジションから個別に配置。これにより香港のチームは各サウンドオブジェクト (この場合はミュージシャンの個々のフィード) をコンサートホールのスペース内に配置し、それに応じてd&bラウドスピーカーに割り当てることができます。ミックスの構成、制御には、d&bのワークフロー内でd&b ArrayCalcとR1が使用されました。

著名なサウンドデザイナーである夏恩蓓(Candog Ha)氏はd&b Soundscapeシステムの設計とセットアップを指揮し、d&b Soundscapeの可能性を観衆に示し、体験の準備を整えました。彼女は演説の中で、SoundscapeがLPOの演奏の本来のありのままのサウンドをどのように再現するかについて説明しました。

「このプロジェクトは、従来の録音形式とは著しく異なっていました」と夏恩蓓氏は言います。「Soundscapeが各楽器をオブジェクト配置というフォーマットで再現することを理解したLPOチームは、各楽器のマイクを通常よりもはるかに近接して配置し、それぞれの演奏を個別のトラックとして録音しました」 

夏恩蓓氏はサウンドファイルを受け取ると、それらをSoundscapeシステムにロードして聴き、大會堂のステージにあわせて各楽器やオブジェクトの位置を調整し、楽器の実際の位置を完全に再現できるようにしました。

LPOの演奏と録音に際しては、香港に拠点を置く作曲家のチャールズ・クウォン氏がロンドンに飛び、大會堂でのオブジェクトの位置を再確認し、再現された音がロンドンでの演奏と完全に一致していることを確認するためのサポートを行いました。

真にオーディエンスのための体験。

「d&b Soundscapeは素晴らしいです」と夏恩蓓氏は加えて言います。「観衆は真に包括的な音像を味わうことができました。たとえば、ホールの脇に座っているときに受けるモノラルなイメージではなく、どこに座っていてもそれぞれ楽器の実際の位置が聴こえました。Soundscapeのおかげで、このパフォーマンスのためにまさに芸術と技術を融合することができました。ここではLPOがコンサートスクリーニングを通して演奏する中、Soundscapeを用いて楽器の細やかなディテールを再現できました」

d&b Soundscapeシステムの心臓部であるd&b DS100シグナルエンジンに加えて、d&bラウドスピーカーのセットアップが採用されました。ここには、Y8およびY12ラウドスピーカーから成る5つのラインアレイ・グループが含まれ、ローエンドのV-SUBサブウーファーでサポートされます。チームは、フロントフィルにはE8ラウドスピーカーを採用し、T10ラウドスピーカーをバルコニーエリアの周囲とその下に配置して、真の360°体験を作り出しました。ラウドスピーカーとサブウーファーを駆動するのはd&b D80およびD20アンプです。すべてのd&bの機材は、香港を拠点とするMad Music社が提供しました。

創造的なオーディオエンジニアリング

「Soundscapeシステムの活躍はいつも目覚ましく、このようなハイブリッド・イベントを大成功に導きます」とd&b Greater Chinaのダニエル・チャンCEOは語ります。「大會堂ではLPOの演奏のローカライズを完璧にこなしてくれました。Soundscapeシステムを用いると、場所や時を問わず、パフォーマンスに境界がなくなります。創造的なプロセスと世界中の人々のつながりに制限がなくなります。これは私にとって、真の創造的なエンジニアリングの術です」

2回の公演は首席指揮者のエドワード・ガードナー指揮でロンドンにて録音され、バイオリニストのニコラ・ベネデッティがオーケストラと共に演奏しました。1回目の上映では、香港の作曲家であるチャールズ・クォンが記念日のために委託作曲した作品「Lullabies」の世界初演と、チャイコフスキーの「交響曲第5番 ホ短調 作品64」の演奏が披露されました。 64". 2回目の上映は、ブルッフの「ヴァイオリン協奏曲 ト短調 作品26」とエルガーの「創作主題による変奏曲 作品36『謎』」。

このイベントはまた、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団が1962年に香港大會堂の落成式で一連のコンサートを行ってから60年を記念するものでもありました。

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