d&bが、コールドプレイが要求する2022年ツアーの「グリーン・イニシアティブ」でFirehouse社とWigwam社をサポート。
コールドプレイの「ミュージック・オブ・ザ・スフィア」米国コンサートツアーは、テキサス州北部のコットンボウルを皮切りに、ヒューストンとシアトルでの開催を経て6月中旬まで続きました。このツアーにおけるバンドのサステナビリティ・イニシアチブは、セットの仕込み、移動から電力、音響に至るまで、すべてのツアーオペレーションを最高の科学と実践に基づき、CO2排出量を最小限に抑えるように適応させるというものです。そしてツアーでは、チケットが1枚販売されるごとに木が1本植えられ、収益の一部は世界中のさまざまな”グリーン・イニシアティブ”に充てられます。
コールドプレイのチームはそこで、サウンドシステムのエネルギー効率を2016/17年のツアーと比べて50%向上させることを求めていました。そうした前提条件のもと、2016年からコールドプレイのツアーをサポートしているFirehouse Productions社(ニューヨーク)は、効率性の高いd&b audiotechnikのGSLおよびKSLラウドスピーカーを導入し、入力電力需要がより低く、省エネ機能が強化されたD80アンプと組み合わせることに決定しました。「FirehouseはWigwamと協力してコールドプレイのヨーロッパ・ツアーをサポートしています。FirehouseがアメリカでPAを担当する一方で、Wigwamはツアーがヨーロッパに向かう今年後半にプロダクションを提供する予定です」とFirehouse Productions社のアカウント・マネージャーであるニック・ベチャード氏は語ります。「この共同の取り組みは非常にうまく進みました」
d&b SL-Seriesは効率の向上を求めて開発されており、以前のシステムと比較して、同等の音圧出力レベルで、必要電力が最大50%削減されています。また、正確な指向性制御がSL-Seriesの特徴の1つであることに変わりはありません。
「屋根のないスタジアムなどを含め、ツアー会場の99%は屋外になります」と、コールドプレイのサウンドデザイナーチームの責任者、トニー・スミス氏は語ります。「ラテンアメリカと北アメリカのスタジアム内外の音の限界はモニタリングされていないので、NoizCalcはまだ実装されていません。ヨーロッパに足を踏み入れると、音の漏れが問題とされるのでNoizCalcは有益なツールになる一方で、ArrayProcsessingを活用することによりスタジアムにおいて音をどこまで会場内に留めることが出来るかを予測することができます。また、SL-Seriesを使うとその全帯域指向性制御により、アレイ背面への音の回り込みが抑えられるので、通常はデリケートなステージ上のレベルのモニタリングにも役立ちます」
d&bのNoizCalcは、野外会場の周辺地域への環境騒音を予測することを目的としてSoundPlan社との提携のもと開発されました。このソフトでは、地形、建物、風速、気温、湿度を考慮に入れた予測が可能です。
d&bのArrayProcessingを使用すると、音圧レベルの分布と音色バランスの微妙な制御を行うことが出来ます。スミス氏は続けて、ArrayProcessingは欠かせないツールになったと評価し次のように述べます。「先に述べた通り、音漏れの制御だけでなく、スタジアム内のサウンドレベルを調整するためにも欠かせません。オーディエンスを聴覚障害から護るために、音が最も大きくなるエリアをモニタリングする会場もあります。J-Seriesを採用したある会場で、オーディエンスエリア全体でサウンドレベルが均一になっていることに現地の自治体職員は驚いていました。そして今、SL-Seriesの登場のおかげで、その効果を続けて継承できることは喜ばしいです」
スミス氏は、d&b audiotechnikのR&D部門が電力使用量をモニタリングできるように、彼らのもとから同部門にデータを送っていると言います。
ツアーのファーストレグは南米からでした。重量の問題や大量の音響機材の輸送に伴う環境負荷を考慮して、Firehouse社は、SL-SUBとJ-Seriesを主に使用した機材をできるだけ多く地元で手配するよう、現地サプライヤーを支援しました。「私たちは素晴らしい結果を残し、2017年にやり残したことを取り戻しましたが、GSLを使えることを楽しみにしていました。失望はしませんでしたよ。とても楽しかったし、サウンドは最高でした。スピーカーからのサウンド、そしてその超ローエンドは素晴らしいものでした。仕事がすべて円滑に進むようにグラウンドサブのプレッシャーを取り除けることは、バンドにとって助けとなったし、難しい会場でも様々なツールを用いてサウンドを整える能力は並外れていました。そしてCPL(カップリング)機能は、望む通りのサウンドの形成に大いに役立ちました。上層の席においてのローエンドも大幅に改善されました」
「多くの会場ではすでにサステナビリティ戦略が採用されており、環境にやさしい方法でツアーをしたいというアーティスト側の願望はさらに高まっています」と、d&b audiotechnik Americaのマーケティング担当副社長であるマーク・ロペスは述べます。「d&bは、ライブエンターテインメント・ビジネスでの二酸化炭素排出量を削減するための活動が評価され、グリーンガーディアン賞(Green Guardian Award)を受賞しました。私たちは、コールドプレイのサステナビリティー・イニシアティブを支援できることを光栄に思っています」
コールドプレイが採用したd&bシステムは以下で構成されます:メインハングの両サイドにGSL8を16台、サイドハングの両サイドにGSL8を16台、両サイドのフライングにSL-SUBを6台、270ハングの各サイドにKSL8を18台、各ハングに16台のKSL8を備えるの4本のディレイタワー、グラウンドサブ用にSL-SUBを18台、そしてフロントフィル用にY7Pを6台とY10Pを8台。
D80アンプは合計116台使用されます:ステージの両サイドに40台と各ディレイタワーに9台。Luminex Networkバックボーンが、アナログバックアップ付きの信号のAES配信用のOptocoreバックボーンを用いたアンプ制御に使用されます。そして8台のd&b M4ステージモニターが、ツアーに出入りするさまざまなアクトを処理。
記事の公開の時点で、スミス氏は、ヨーロッパのツアーではリングディレイに新しいD40アンプを使用するという知らせを受けたと言います。「またこれに加えて、両サイドに3つのハングを追加し、ベルリン、パリ、ワルシャワの会場では屋根の後方に2つを吊り下げます。各ハングは8台のV8で構成され、リアのペアにはV12を用います(Wigwam社が提供)。これは、大規模な会場では、カバレッジを均一にするだけでなく、カバレッジをより適切に制御し、現場外の音圧レベル測定値の音の分散を抑えるのに役立ちます。これで間違いなく観衆により良いサウンド体験を提供できます。これがどのように機能するかを目の当たりにするのが楽しみです。そして、電力が少なくて済みますし!」
Firehouse社は、2台のDiGiCo SD10を含むサポート制御パッケージも提供しています。Wigwam社はコールドプレイの制御システムパッケージを提供しています。コールドプレイの制御システムは、DiGiCo SD7Q、SD10RE、SD Rack、Nano、Miniに基づいており、いすれも32bitカードが使用され、2つのループが用いられます。そしてOptocore社のフェスティバルボックス、M12、バックラインのMADIラインをループに転送するためのDD2。DirectOut Prodigy社のMCとMPは、MADIへのアナログI/OおよびシステムEQと制御に使用されます。Wigwam社が提供するその他のシステムには、Wysicom IEM、2台のM2ステージモニター、ベースプレーヤーのガイ・ベリーマン用のJ-SUBが1台含まれます。
ヨーロッパでは、XSLトップがサイドフィル用のKSL-SUBと組み合わせて使用されます。「これで、ステージ上の音がなくなります」とスミス氏は言います。「私たちは、少しだけギャップを埋める、あるいは少なくとも、他のPAシステムから出てくるごった煮ではなくクリーンな音声を提供する能力がなくてはいけないと感じました。繰り返しになりますが、小型フォーマットのSL-Seriesはサイズと消費電力は半分なのにも拘わらず、大きなパンチを備えています」
d&b audiotechnikのアムノン・ハーマンCEOは、広範囲にわたるサステナビリティー原則に対する同社の長期的な取り組みが本物であることを強調します。同社は2013年から環境認証を所有しています。d&bは2018年以来、州政府と連邦政府が推進するいくつものイニシアティブに参加し、国連の国際原則に従うことを通じて、効果的なサステナビリティーの要件を満たすための努力を自主的に行っています。「現在、そして将来において、同僚たちと協力しながらこれらの原則を社内にしっかりと組み込むことを目標として宣言しています」
コールドプレイと彼らのグリーン・イニシアティブの詳細については、sustainability.coldplay.comをご覧ください。
Firehouse Productions社の詳細については、www.firehouseproductions.comをご覧ください。