The Nicofarre club, blurring reality virtually
ニコファーレはライブパフォーマンス会場ではありますが、従来のそれとは全く趣きが異なります。この場所では現実とスクリーン上の非現実との境界が曖昧になり、観客を不思議な次元へと誘うのです。壁4面と天井にビデオスクリーンを設置したことによるインパクトは絶大なもので、皮膚感覚が溶け出すかのような体験は観客を虜にしています。しかし重要なのは、これだけ多くのリピーターを生み出している最大の要因はそのコンテンツだという点。近年の潮流に違わず、ニコファーレもインターネットが産み落とした存在です。 そのアイデアが生まれた場所は日本の有名な動画共有サイト、ニコニコ動画。その運営会社ドワンゴが目をつけたのが、本サイトで人気のライブストリーミングサービス、ニコニコ生放送です。ユーザー同士がコミュニケートし、感情を共有し、意見を交換しあう、それをよりダイレクトな形に変換出来ないだろうか。そのようなアイデアを巨大なスケールで実現させたのがニコファーレなのです。 コンセプトはとてもシンプルなもの。ニコファーレ内で行われるステージパフォーマンスは会場内の観客だけでなく、ニコニコ生放送を通じてオンライン上の観客にも同時に届けられます。オンラインの観客はその映像にインタラクトすることが出来、そのレスポンスがニコファーレ内の壁面、天井に設置されたスクリーンへと戻って来るのです。ミックス、モデリング、映像内の映像、ネット上へのライブ配信など、洗練されたビデオコントロールシステムがあってこそ、このような卓越したクオリティーを誇るリアルタイム体験が可能となるのです。 ビジュアル面が優れているからこそ、オーディオシステムにも同じだけのクオリティーが求められるというもの。まさかのサイレントムービーという訳にはいきませんから。観客を取り囲む360°のビジュアル体験を支える音環境を担当したのは、今岡隆氏が率いる株式会社オーディオブレインズでした。 「我々が採用したのはハイクオリティーでパワフルなd&b audiotechnikのPAシステムですが、観客の視線を妨害しないように細心の注意を払いました。」Imaoka氏はそう説明します。ステージ正面には8本のd&b T10ラウドスピーカーを、さらに2本をフィルに、そして4本のd&b Qサブウーファーを配置し、それら全てをd&b D12アンプにて駆動させるシステムとなっています。全観客に明瞭な音を届けるためにも、キャビネットは必須となっていました。そこで今岡氏は、コアキシャルデザインによって驚くべきボーカルの存在感を実現するd&b MAXキャビネットをウェッジとして使用、ニコファーレには不可欠な要素であるボーカルを見事に際立たせることに成功しています。こうしたラウドスピーカーの組み合わせ、そしてボーカルの存在感は、映像に負けないパワフルさを持つサウンドを実現しています。 バーチャルな存在には慣れっこの東京という都市においても、ニコファーレは異彩を放ち、観客を魅了し続けています。驚くべき映像、そして刺激的なサウンドが、ワイルドな観客との双方向コミュニケーションの中で展開される。これほど人を夢中にさせる体験が他にあるでしょうか? *記事、そして写真の一部はMondo dr誌より許可を得て引用しています