オペラとサーカスの融合Monkey、d&bともに西へ。
「Monkey:Journey to The West」は新しいオペラでBlurのフロントマンであり、ボーカリストとして、また最近ではバーチャルバンドGorillazの創設者、ミュージシャン、ボーカルとして有名なDamon Albarn氏が音楽監督を務めています。そのオペラのワールドプレミアが2007年6月にイギリスのマンチェスターで行われました。その2週間の間に絶賛を浴びた後、パリのChatelet Theatreに場所を移しましたが、そこでも同様に称賛を受けました。続いて2008年2月 9日に中国旧正月のイベントの一環として英国博物館で行われたロンドンプレミアが行われ,現在この演目はアメリカのチャールストン、Spoleto Festivalにて2008年5月~6月の日程で公演が行われています。 舞台は16世紀のWu Cheng’enの中国小説が西欧へと旅立つことをモチーフにして、中国の俳優兼監督Chen Shi-zheng氏がそれを猿が演じるオペラとして思いつき脚本を書き、ミュージシャンDamon Albarn氏と彼のユニットGorillazのコラボレートアーティストであるJamie Hewlett氏がスコアとヴィジュアルデザインを手がけています。Shi-zheng氏はアニメ的な風刺表現とGorillazが生み出す音楽との融合に興味を持ちました。彼らが初めて会ったときに皆1980年代初期にイギリスで放送されていた日本のアニメシリーズを幼少期に皆好きで見ていたことで意気投合しました。 このショーはオペラとサーカスを融合させたような感じで、非常に斬新であると言えます。12人のシンガーと40人のアクロバット・武術家チーム、7人が自ら飛びながら歌うようなパフォーマンスを演じるのは全て中国人キャストで中国の標準語で行われます。一方の音楽面も非常に多様性に富んでいます。オーケストラピットには30人のミュージシャンと指揮者がいて、楽器は西洋では一般的であるブラス、パーカッションとストリングスと並行して様々楽器があることをサウンドデザイナーのBarry Bartlette氏は次のように表現します。「自分が関わった仕事の中で一番豊富な音楽の色を含んだパレットといえます。」希少な楽器演奏のスペシャリストThomas Bloch氏は、カラス製のハーモニカや水を注いだグラスを濡れた指でこすって異なる音階を出したりというような様々な音を紡ぎだしました。1920年代初期にあった音楽的に表現しにくい音を発するキーボードオンデ・マルトノもあります。Albarn氏のスコアには中国琵琶等の中国楽器やピアノ、サンプラー、手回しオルガン等が含まれていました。 Albarn氏は、より音楽の充実を図るため、彼の音楽監督であるDavid Coulter氏と共に新しい楽器を取り入れることにしました。それがKlaxophone と呼ばれるもので、その名が示すとおりホーンが並び、それらにコンプレッサーから空気を送り込んで音を出す楽器です。「これは音階を表現することができます。」とBartlett氏。「そして非常に激しい音を出します。」それを彼は他に影響を及ぼさないように適度に使用しなければなりませんでした。 これらの非常に広いダイナミックレンジを再生するためにはd&b audiotechnikのシステムしか無いとBartlett氏は主張していました。マンチェスターのオープニングと続いて行われたパリではQ-Seriesを基本としたシステムを使用しました。パリのChateletでは、3段に分けられたL/Rシステムを異なるレベルに設定し劇場のメインエリアをカバーしました。その他のエリア向けには常設のE3とCi80を組み合わせでアンダーバルコニーとディレイ用に使用しました。更に常設のC7サブウーファーもシステムに統合されて使用されました。「パリにあるd&bフランスオフィスが数年前にこの劇場のシミュレーションを行った時のEaseプロットを持っていたので非常に助かりました。」とBartlett氏。「これを元に客席に必要なカバレージを得るために何所にスピーカーを設置するのが最適かということがわかりました。」 メインシステムはFOHのDegidesignのVenueステージラックから直接AESデジタルで入力されるd&bのD12で駆動されています。 そしてこれらのアンプを含めたシステム全体はd&bのR1リモートコントロールソフトウェアで制御されます。 Bartlett氏はオープニングを終えたAlbarn氏からのコメントを次のように語ります。「オペラにクラブやディスコ並の低域が組み合わさったような感じです。」