Canada wins in more ways than one at the Winter Olympics
バンクーバーで開催された冬季オリンピック用施設の1つであるConcord Pacific Siteに位置するOntario Houseは、オリンピック熱にうかれるバンクーバー市民からの予期せぬ人気に沸いています。その名前が示す通り、Ontario Houseはオンタリオ州のパビリオンであり、名産品や観光名所、特産品のワイン等を展示する場です。ただしOntario Houseは普通のパビリオンとは一味違います。プレゼンテーションをより力強く、エキサイティングな物にするためにアートテクノロジーを惜しみなく使用し、観客の心に深い印象を残す演出が凝らされているのです。その人気の秘密を覗いてみましょう。
「このプロジェクトが始動したのは1年程前のことでした。」Ontario Houseに携わった技術担当企業の中でもメインの1つ、Apex Sound & LightのプロジェクトリーダーであるCorry McGibbon氏はこう切り出します。「建設のメインを請け負ったEllisDonに要求されたのは、来訪客とのコミュニケーションを可能にする機能性でした。ApexはInfinite Stage DesignのPatrick McKenna氏と協力し、現場の音響と照明デザインを担当することになったのです。」
ここでMcKenna氏が話を続けます。「オンタリオ州政府からの『要求』はかなり抽象的なものでした。その分クリエイトの余地が残されていたとも言えるのですが。我が社Infinite Stage Designは、EllisDonとNussliが共同して結成したプロジェクトチームの一員として今回の案件に臨むことになりました。とにかく活気あふれる物にしようということで、一日中楽しめる様々なライブアクトや、場内に常設される飲食店舗などのアイデアを固めていきました。中でも観客の度肝を抜くために考え出されたのが、3Dと4Dのプレゼンテーションです。」(ここでの4Dとは、3D映像に空中散布される香りを加えたもの)
「最終案を提出したのは2009年春です。」McGibbon氏はそう語ります。「こうした物事にありがちですが、それ以降もアイデアには様々な改良が加えられることになります。中でも我々がこだわったのは、どれだけ音響システムが複雑で広範囲に跨がろうと、トータルコントロールと再調整を可能にするために1つのラウドスピーカーには1つのアンプチャンネルを貫く、という点でしたが。結果は大変満足いくものとなりました。」
そのこだわりのためにApexがチョイスしたのがd&b audiotechnikでした。Ontario Houseの目玉の1つが、オリンピック開催中に毎晩催されるコンサート。その会場となるメインステージにはJ-Seriesを採用しました。本ステージは日中にはパブリックイベントにも使用され、世界的に有名なカナダ人ホッケープレイヤーであるWayne Gretzky選手のトークショーの舞台ともなりました。しかし音響設備が必要とされたのは何もメインステージに限ったことではありません。壁には様々な映像機器が並べられている他、随所に配置された9:16のプロジェクションスクリーンにもそれぞれのサウンドが求められていました。
McGibbon氏はこう語ります。「我々は至るところにd&b製品を使用しました。フィル用にE3、そしてディレイ用、ラウンジスペースの独立したシステム用にQ-Seriesから様々なタイプを選択しています。これら全てをコントロールするために使用したのが、d&bのリモートコントロールソフトウェアR1です。1つのラウドスピーカーに1つのアンプチャンネル、というこだわりのおかげもあり、オープンから数日で急激に増えた観客にも柔軟に対応することが可能となりました。」
オリンピック開幕から右肩上がりに人気が高まっていったOntario Houseについて、McKenna氏はこう語ります。「初日の晩は大変でした。コンサートホールの定員750名に対し、おそらくその5倍の観客が押し寄せたのではないかと思います。我々もそうした状況を想定し、屋外にもオーディオセット、そしてLEDスクリーンを設置済みでした。あいにく外は雨だったのが残念なところですが。こうして初日に学んだことを生かし、その18時間後には改善を加えました。Ontario Houseではイベントが毎日開催されるため、その日ごとに良い点、悪い点を洗い出せる上、機材の柔軟性により改善を着実に積み重ねていくことが可能なのです。その結果Ontario Houseの観客動員は増え続け、当初の3倍となりました。皆さんアイスホッケーの試合はOntario Houseで楽しみたいようです。」
Ontario Houseの設計はNussli(イベントやエキスポ等の建築設計に特化したスイスの企業)が担当し、壁に堅固な木材を、床はコンクリートと防音処理された木材を組み合わせ、天井には鉄骨をふんだんに使用したデザインとなっています。「こうした強固な設計であるからこそ、とても小さな会場であるOntario Houseでも比較的大きなJ-Seriesを使用することが可能になったのです。」そう語るのはMcGibbon氏。「構造としては簡単な部類とは言えませんでしたが、d&bの正確なパターンコントロールを持ってすればこの程度の反響など問題にもなりませんでした。」
「我々は何か最新な事を成し遂げたいと常に願ってきました。」そう締めくくるのはMcKenna氏。「本プロジェクトの受注が決まってしまうと、実現に向けての大部分は我々に任されることになりました。Apexとはもう8年の付き合いがありましたから、これだけ責任重大な案件を頼めるのは彼ら以外に思い浮かびませんでしたし、実際に素晴らしい仕事をしてくれました。観客の動向に見事に応える音響、特にアイスホッケーの試合に殺到した観客への対応は見事でした。」オリンピック最終日にアイスホッケーカナダ代表が金メダルを獲得したことは、きっとMcKenna氏の興奮に油を注ぐ結果になったことでしょう。「最高のチーム、最高のクライアントに恵まれ、最高の仕事を成し遂げられたことを幸せに思います。」