8万人を集めたBonnarooでのd&bJ-Series。
テネシー州中心にある町で開催されるこの音楽祭は、信じがたいことにわずか数年で、奔放なヒッピー達の集会から全米規模の大ヒットイベントになりました。今年のイベントは例年通り、3日間で8万人の観客を集めました。元祖ヒッピー系を超越する出演者のライブが行われ、金曜日の夜には、よりダークでラウドな不健全なものを求めるファンが当日のヘッドライナーToolに熱狂しました。土曜日には、イベントの主役ともいえる再び活動を開始したThe Policeが、より一般受けする音楽で観客を楽しませました。そしてBonnarooはイベントの原点に戻り、カントリーロック、ブルースをWidespread Panic (以下Panic)が熟練したギターで魅せる3時間の公演で2007年の幕を閉じました。誰にでも楽しめ、誰もが異なる趣向を求める観客たちのイベントになったようです。 音楽祭のトリを飾るPanicのFOHをミキサーであるChris Rabold氏にとって、特に気分の良く日曜日を過すことができました。「Eighth Day Soundは私が必要なツアー機材を既に全部揃えてくれていましたので、何も持ち込む必要がありませんでした。彼らが携わるフェスティバルの現場に来ると、昔の友達に会う時のような気分になります。最も重要なメインシステムに彼らは私の愛用するd&b audiotechnik の新JシリーズのPAシステムを設置してくれていました。」普段ツアーで各地を回る仕事とフェスティバルでの違いを論理的に説明するのは難しいかもしれません。Panicのような音楽的に濃密かつ複雑な演奏には何が一番必要なのでしょうか?「恐らく私たちは今まで毎週3時間のショーを5回、各地で行ってきているのでアメリカの中では誰よりもJシリーズを長く使っていると思っています。従って、あらゆる環境でのJの持ち味を把握しているつもりです。私はd&bがアメリカで使用可能になるのとほぼ同時に使い始めました。何年か前にPanicはバンドとしてEighth Dayに依頼する意向を固めましたが、その頃にd&bの製品を知ったのです。その当時は別のメインシステムを使っていましたが、すぐに気付いたのは、d&b製品はどれも音楽のサウンドは同じにもかかわらず、そのラインナップにはサイズ、指向パターン、パワーの多様さがあり、会場の違いによるやっかいな相違点を埋める作業をいとも簡単にしてくれることでした。目の前にある全ての製品に驚かされました。それからしばらくして、2500人の観客のカジノでショーをするようになりましたが、Eighth Dayのスタッフは非常に小さなQシリーズを設置しただけで、私に彼らを信用しろというのです。少し心配しましたが、3曲終わって、Qシリーズが余りに凄いので思わず笑ってしまいました。」 Toolの事情は少し異なりますが、Eighth DayのスタッフとJシリーズと一緒にツアーをするという点では、Panicとほぼ同一だといえます。「普段との違いは、このイベントでは会場に来て、ステージへ向かい、演奏をするだけだったことです。」とFoHエンジニア、Al ‘Nobby’ Hopkinson氏は説明しました。「バンドのメンバーもいつもより少し緊張していましたが、いつも一緒に仕事をしているEighth DayがPAを行っていたので、スタッフは皆安心していました。ここに来る前にd&bアメリカのColin Beveridge氏と、フライングした時のSUBのローエンドの量感について話してきました。ツアー中にJサブウーファーを自分自身で使用して非常に楽しめました。J-SUBはまさしく空気を振動させるのです。これがフライングした状態でも同じことができるという確信が欲しかったのですが、Beveridge氏はまさにそれを証明してくれました。」 Eighth Dayは非常広い観客席をカバーできるよう、メインステージにJシリーズのアレイを両側に2列ずつ設置しました。フライングのJ-SUBに加えてINFRAモードのB2も使用しました。Eighth DayのOwen Orzack氏は説明しました。「これは、ただうなるような音を増やすのでは無く低域を拡張するためです。」モニターはC4/B2のサイドフィルと合わせてM2を使い、ドラムモニターはC7-SUBとM2を使いました。そして、フロントフィルにはQ10を、ディレイのクラスターとしてdV-DOSCを使いました。根本的に、それらのPA設備はToolやWidespread Panicがアリーナツアーで使うJシリーズと違いはありませんが、アリーナでの経験は、広大な野外ステージに延長して考えられるものなのでしょうか? 「ここでは以前にも数回演奏したことはありますが、その時はこのシステムではありませんでした。」とRabold氏は話し始めました。「Bonnarooは常に私たちにとって最高の舞台のひとつです。会場は広大な敷地で、その大きさ広さを実感するのが、ミキサー席までステージから150フィート(約45m)も離れていることです。この場所で104dBAの音量を目指していますが、無難にこなせています。今回のショーで非常に良かったことは、常にヘッドルームに余裕があり、パワーがあることです。それなのに耳の疲れを感じません。」Nobbyも同意しています。「私もRabold氏と同意見です。システムはツアーで使っているシステムと比べて大きさに違いはありませんでした。唯一違うのは、調整のために後ろの音を聴きにいくのが遠くなった位です。ミックスはEighth Dayが私のために用意してくれたXL4を使用しました。 Toolのショーは非常に広いダイナミックレンジになるので、マスターフェーダーの手前のグループでコンプレッションを行っていますが、それでも音は素晴らしいものです。公平に見ても、これだけのダイナミックレンジの変化を忠実に再生できるのはこのシステムだけです。」直接The PoliceのFOHを担当したMike Keating氏と話を聞くことはできませんでしたが、Orzack氏は「非常に良い経験になったと聞いています。」と教えてくれました。 エンジニア3人とも観客が満足するダイナミックレンジの提供を重視していました。例えば、Keating氏は特にPoliceの曲が静かになった瞬間に、音楽のちょっとしたニュアンスの違いを引き出すことで有名です。会場全体のシステムの性能はどうだったのでしょうか?「想像以上でした。」 Rabold氏は言いました。「私のバンドはとても目まぐるしく、エネルギー旺盛で、動きが多いのです。ミュージシャンの観点から言えば、私には、ミックスの中に全員の空間を見つけ出す能力が必要なのです。これは分り易くいえば、Jの場合、ジャムセッションする人たちの音を中間に集めるようなやり方でなくても単純にバンド全体のミックスの中で個々の音がきちんと存在しているのです。私は殆どシステムEQ使いません。ROPEシステムはとても使いやすく、実際にシステムEQが少ないほど良いと感じています。電源を入れるだけで、既に詳細な情報量を含んだ緻密な音がでてきます。」 使いやすさということは、音楽祭の現場全体で見受けられます。Eighth Dayはジャズ、報道関係、お笑い、映画の各テントの全てにd&bの音響システムを設置しましたが、これらはわずか12名のEighth Dayのスタッフが、メインステージのシステムと全てのテントの全音響システムを設置したのです。Rabold氏はEighth Dayを高く評価します。「Eighth Dayは完璧です。私の仕事がとてもやりやすくなりました。」そして、こう話を締めくくりました。「自分達のDigidesign Venueをこのイベントに持ち込みましたが、Digidesignとd&b間の基準は非常に高いと言っておかなければなりません。ドイツの誰かが悪魔に魂を売り、その引き換えに手に入れたんじゃないか?と思えるほど、このシステムは非常に優れています。」