農村Wackenが重量級低域に目覚める。
先日ドイツのWackenで行われたWDR(西部ドイツ放送局)主催の有名な音楽イベント「Rockpalast」のレポートが届けられました。このヘビーメタルイベントの観客を乗せた専用列車、その名も「メタルトレイン」はスイスを出発し、ライン渓谷に至るバイエルン地方をまるで蛇が這うように通り抜けSchleswig-HolsteinにあるWackenに至るまでザクセン州、西Faliaを横断して辿り着きます。 Wackenとは、どこ?どのような場所か?と思われると思いますが、ハンブルグより北に約80キロちょっとの場所で、人口はたった800 人の非常に小さな村です。しかし何故このような小さな村に多くのヘビーメタルファンが集結するのでしょうか? このイベントの発端は、1990年代にさかのぼりますが、この地出身のSkylineという名のヘビーメタルバンドがライブイベントの開催を切望し、 Wacken近郊の牧草地帯で自らが主催して野外イベントを行いました。初回は熱狂的な800人の観客を集めたこのイベントはその後地元のイベントから国際的に有名なヘビーメタルフェスティバルと変貌していきました。そのため牛と農民の普段は牧歌的な非常に小さな村は、突如として世界的にも類を見ない規模のヘビーメタルイベントの地としてその名が知れ渡るようになりました。Wackenは現在でも牛が生活し、普段はよくある他の小さな村と同様に静かな日々ですが、毎年八月の数日だけは村人も「彼ら」のイベントに参加します。ケーキを焼いたり、チケットを販売したり、交通整理をしたり、8万人もの来場者が必要とする駐車場を確保するなど奔走します。このようにして参加する全ての人々は地元出身のスターFire Brigate Bandによる古典的なオープニングコンサートによって始まる瞬間を待ちわびています。 このイベントが1996年に本格化して以来、PAはドイツでも有数なCrystal Sound社が機材を供給しています。そしてサウンドシステムも開始当初はポイントソースシステムで始まり後に規模の拡大に伴って、必然的にラインアレイシステムへと変化を遂げてきました。今年はイベント規模が過去最大になることが予測されたため、PAシステムにも何らかの変更をする必要があったことを同社の専務取締役であるGeld Gruss氏が説明します。「当社から今年ヘッドライナーを務める各バンドのサウンドエンジニアにシステムプランを事前に送付しました。その中には今年初めから大規模な投資を開始したJ-Seriesシステムをサイドフィルに使用するプランを記載したところ、FlamesのサウンドエンジニアであるTom Kubik氏から冗談交じりに「何でサイドフィルを回転させてメインシステムとして使用しないんだ?」との返答がきました。後で彼から聞いたのですが、彼は今年初めに SlayerのツアーでJ-Seriesを聴き非常に感動を覚えたそうです。私も既にJ-Seriesの機能の一つMOST(ミッドレンジがTOPと同じように効率的に動作する)機能について高く評価していたので彼の意見をプロモーターや他のエンジニアと相談したうえで最終的に採用することに決定しました。」 Gruss氏はd&bの「Vier」ことWerner BayerとJ-Seriesの開発者であるMattias Christnerにこのフェスティバルの2つの隣り合わせとなるステージ形式でどのようにJ-Seriesを吊れば良いのか?という意見を求めました。「大音量を出すロックが好きなので、このイベントに関わることは非常にエキサイティングなことでした。」とBayerが説明します。「そしてその時がちょうど1年間掛けて調査していたサブウーファーアレイの電気的補正による指向性制御に関する調査が終了した時だったのです。」 使用された構成は、各ステージの両サイドに最下部のみJ12を使用したJ8アレイとその隣にJ-SUBをフライングしました。「このフライングサブウーファーコラムで垂直指向特性を狭め、後方のエリアへ充分に低域エネルギー供給します。しかしながらコムフィルター現象によるエネルギーの減少が中間で起こるのでそれを補充するために3段積みのJ-SUBを各ステージ前全体に渡って等間隔に並べて、前述した調査による結果からそれにメインシステムとのディレイ補正に加えて、ディレイを掛けて均一なカバーエリアを確保しました。」 Bayerが大音量のロックが好きだということは、低域を含めた音圧レベルがハウス位置で110 dBA、エリア最後部の100m位置でも100 dBAだったということからもわかります。「スタック部分のJ-SUBはINFRAモードで駆動し、ムラのないカバレージを実現することができました。各ステージの客席エリアから外れると中・高域とともに低域も徐々に減少していましたが、エリア内においては、体全体を震わせるパンチのある低域がどの場所でも感じられました。」 「使用したエンジニア全員がこのサウンドシステムを非常に気に入ってくれました。」このフェスティバルの目的にはJ-Seriesもまた合っているのかも知れません。「晴れでも雨でもまたWackenでJ-Seriesを目にすることができるでしょう。(今回の期間中に雨が降ったために、足元は非常にぬかるんだ状態で行われました。」とBayerが締めくくりました。